聖籠庵 伊月編 第4話
この遊郭・聖籠庵(セイロウアン)の社長。怪しげなミセの当主だ。絶対に強面の、刺青とかバンバンいれちゃってるような、怖いオヤジ。俺は勝手に、そんな想像を膨らませていた。・・・・・・そう、勝手にだ。
こんなにも肩書と容姿が合わない人間がいるのか。こんなこと久しぶりに思った。
人は見かけで判断してはいけない、と。
俺たちが1階の大きな正面玄関についたころには、そこは大きな人だかりが出来ていた。みんな、この聖籠庵で働く人々。口々に何かを話しているが、内容は聞こえない。音葉(オトハ)が俺を引き連れてくると、ほとんどの人たちが俺のことを見る。俺も俺で、音葉に引っ張られながら、この異様なミセの住人たちの顔を確かめる。
そんな中でもひときわ、目を引いた人が2人。1人は紫色の着物を着て、かなり背が高い。すらっとした冷たい顔と上から見ている鋭い眼。一瞬、俺を目があったが、向こうは興味なさげに目をそらされた。もう1人は、さっきの目のきつい人とは正反対。ふんわりとしたマロンブラウンの髪。少し音葉と雰囲気が似ているが、この人のほうが大人の可愛らしさといおうか、そんな感覚に受け取れた。
もっとよく見ようと背を伸ばすと、それは音葉の手を引っ張る勢いに負け、気がついたころには俺たちは、人だかりの1番前まで来ていた。1番前には、さっき会った玲子さん(レイコ)やイケスカない神崎(カンザキ)店主もいる。玄関扉の隣で、1人の番頭がみんなに聞こえるように大きく声を張り上げた。
「みなさま!たった今、当聖籠庵社長、一之宮 保徳さま(イチノミヤ ヤスノリ)がご来店されました!!社長、こちらへどうぞ!!」
みんなに見られてド派手な登場をした社長。きっとキツイ顔のおっさんだと、思っていた。なのに・・・・・誰、あれ?
「やぁ、みんな、こんばんは。元気にしてた?」

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