小説 策略ロマンス

策略ロマンス 第12話

いやはや、時がたつのは早いもので、あたし河崎 叶(カワサキ カナエ)が高橋 一成(タカハシ イッセイ)に宣戦布告をしてから、1週間が過ぎていた。桜の花も散り始め、キレイな緑色の若葉が少しずつ顔を覗かしている、そんな時期になっている。

にしても・・・・・一成のヤツ、覚悟はしていたけど想像以上に・・・・キツイ。かなり面倒である。毎日、毎日がそれこそ戦争で、出来ることなら学校に戦車でもなんでも運び込みたいくらいだ。保健室の一連の事件から、ことあるごとに仕掛けられる罠とワナ。さすがは学年トップなだけある。この天才的な脳の持ち主であるあたしでも、引っ掛かりそうになっていたのだから。


「いや、実際引っ掛かっちゃったんでしょう?その一成くんの罠に」
「・・・・・・・相変わらず、矢野ちゃん(ヤノ)のお言葉はグザグザくるよね。ほんと、それって才能よ、ある種の」



我が家の仕事場で、あたしは日ごろの疲れからマイパソコンくんに寄りかかっている状態。そして、書類整理をしているのが久しぶりの登場のくせしてやたらと服装が派手な、スパルタ編集者の矢野 幸一(ヤノ コウイチ)氏である。どうもあたしは、知らずの間に脳内劇場が勝手に表に出ている節があるらしく、こうして矢野ちゃんにも極悪非道の一成のことを話しているわけで。


「ねぇ、なんで今日、そんなに派手なわけ?突然、家に寄ったかと思えば、仕事してますかぁ?って」
「これですか?実は、今日これからデートなんです。そのついでに先生が仕事してるかどうか、ちょっと寄ったんですよ」
「デート?だから、今日はそんなご機嫌なわけ。・・・・・・・・・・っつかさ、その恰好で?」
「え?いけませんか?自分では、似合ってると思うんですけど」
「いやね、イケないっていうか。むしろ似合ってるんだけど。それは・・・・・」



今日の矢野ちゃんの恰好は、どう考えても一端の編集者とは思えない。白スーツの上下に、中はパープルの淡いシャツ。それに合わせてパープルのカラコンなんかいれちゃって。前にも言ったけど矢野ちゃんは、かなり男前だと思う。身長も高いし、甘いマスクもぐっとくる。でもだね、矢野ちゃん。その恰好でデートって言うのは、デートって言うよりも・・・・・。


「出張ホスト・・・・・」
「ええぇぇ?!なんですか、その例え!ちょっと酷くないですか?!俺ってそんなに遊んでそうに見えます?!」
「遊んでないのは知ってるし、前々からホストっぽいなぁっとは思ってたけど。その恰好するとますますホストだよね。うん、蓮香さん(レンカ)もすごいヤツを相手にしてるよ」
「なんですか、それは?蓮香は似合ってるって言ってくれてるんですよ?何がいけないのかさっぱりですよ」



意外なところで天然を発掘したのは、脇によけてっと。もしかすると、あんなバカなことに才能を使う一成よりも、まだ天然ホストの矢野ちゃんのほうがマシかもしれないよね。


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2:頬杖をつく 【策略ロマンス】

2:頬杖をつく


【策略ロマンス】 叶・圭


オレ、松田圭(マツダケイ)は、今とてつもなく気まずい雰囲気のなかに閉じ込められている。そのうえ、それはどうやらオレ1人が感じていることのようで、この雰囲気を作り出している原因である人物にとってはなんとはないことのようで。それがまた、オレをこの状態から動けなくしている。


「あ~・・・のさ、叶(カナエ)」
「あっ!ストップ!動いちゃダメ、圭(ケイ)!」



気まずさから少しでも動こうものなら、これだ。今のオレの状態を詳しく説明すると、ここは教室で同じクラスのオレたちは、休み時間中であってなにをしていても自由なわけだけれど、この目の前に座る人物はオレの自由を思いっきし取り上げるつもりらしい。さっきまで、ただ単に雑誌を広げて頬杖をつきながら、ちょっとみるとだらしなく過ごしていた。すると、突然友人である河崎叶(カワサキカナエ)がやってきて、良心地が悪くなるほどオレのほうを見ているのである。

あぁ、もう!固い言葉はめんどくせいなぁ!だから、とにかくだな!要するに、さっきから叶がしつこいほどじっとオレを見てるわけ!それで、ちょっと動こうとするだけで大声出して止められるんだよ!そりゃあな、わりと休み時間になると仲がいいダチのところにフラッと遊びに行く叶が、こんなふうにオレの前で居てくれることは結構オレ的に嬉しいけど。その、なんだ・・・一応、これでも惚れた女っていうか。

もちろん、こんなことは一度も本人にも他人にも言ったことはない。オレって見た目が金髪とか派手な分、軽そうに見えるらしいけど、自分で言うのはなんだけど本質的にはかなり慎重派だ。いや、これは別に恋愛に奥手ってわけじゃない・・・と、思う。叶は、性格は別として、容姿は抜群に美人だしモテる。だけど、あれだけ告白されていても一度も受け入れたことはない。それはオレには救いの事実であって、同時になかなか本心を言いだせない問題点でもあるわけで。

男としてどうかと思うが、正直、振られるのは怖い。

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策略ロマンス 第11話

真っ白で洗礼された空間。埃っぽい学校内では眩しいほどの清い場所。そんな保健室にいるっていうのに、ちっとも心が安らかにならない。原因は、ベッドで倒れこんでいるハンサムボーイこと、高橋一成(タカハシ イッセイ)である。

お昼を食べに行こうとしただけなのに、偶然にもコイツと廊下でバッタリ。その後、人の了承もなく、バッタリ倒れてしまったわけであって。で今、一成の親友と思われる美人青年、諸星三雪(モロボシ ミユキ)くんと一緒にコイツの面倒をみている。


「ごめんね、河崎(カワサキ)さん。まさか、あんなところで彼が倒れると思わなかったから。いきおいで一緒に来てもらったけど、迷惑だったよね」

「ううん、そんなことないよ。こんな大柄の男、三雪くん1人で面倒みるのも大変だし」

「そっか、ありがとう。優しいね、河崎さんは」


壁にもたれている三雪くんが、にっこりと笑う。くぅ、男の子でこんなに可愛いなんて反則だ。本当は心底、迷惑この上ないけど、今回は三雪くんの笑顔で勘弁してあげよう。にしても、どうして急に倒れたんだ、この男?あいにく、今日は保健医の先生が出張。こんな日に倒れるなんて、なんて間の悪いヤツ。


「一成ね、昔から偏頭痛を持ってるみたいなんだ。高校生になってからはだいぶマシになってらしいんだけど、最近ちょっと悩んでるみたいで」

「悩んでる?どうして?こんな自分が1番の、悩みなんてなさそうなヤツが?」

「くすくす、河崎さんは素直だねぇ。一成って意外に繊細なところがあるから」

「あっ、ごめんなさい。・・・・でも、一成が繊細だなんて、全然似合わない」


一成の考えられない一面に顔をしかめると、三雪くんが可笑しそうに笑う。だって、どう考えてもないでしょ?繊細?コイツには一生当てはまらなそうな単語だわ。あたしはベッドサイドの回転イスに座って、くるりと三雪くんのほうを向く。


「三雪くんって、どうして一成と一緒にいるの?本当の性格、かなり悪いでしょ?」

「う~ん、そうだなぁ。もともとボクと一成って従兄弟同士なんだ。たまたま高校も一緒になって、それから2人でいるのが多くなったのかな?昔っから気は合う方だったから、今でも一成の悩みとかいろいろ聞くよ。一成の性格だって、ボクはそんなに悪いと思わないけど。ただ、ちょっと不器用なだけだよ」

「うむむ、この性格をぶ・・・不器用で済ませますか」

「くすくす、やっぱりおもしろいなぁ、河崎さん。一成の話し通り」


ん?一成のヤツ、あたしのこと話したりするんだ。まっ、どうせ猫かぶりのバカ女とかだろうけど。思考を巡らせていると、壁際の三雪くんが出口に向かって歩き出した。


「そろそろ一成も大丈夫そうだし、ボク次の授業は欠席できないんだ。ごめんだけど、一成のこと頼めるかな?」

「あぁ、うん。大丈夫だよ。あたしは授業なんて出てても、出てなくてもどうせ分かんないから」

「くすっ、ホントごめんね。それじゃあ、またね、河崎さん」


そう言って三雪くんは保健室の扉に手をかけて、何か思いついたように立ち止った。彼は振り返ると、あのニッコリスマイルで信じられない言葉を言って、立ち去って行ったのだ。


「あのさ、河崎さん。一成のこと、ちょっとだけ良いから真剣に考えてもらえないかな?振られてショック受けた後、慰めるのボクだし。なにより彼・・・・・たぶん、初恋だと思うから」


バタン


扉が閉まる音がやけに大きく聞こえた。


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策略ロマンス 第10話

春一番が吹き始めて、ぽかぽかした陽気にほとんどの生徒が押されている。押された先には、授業中の机の上に・・・パタンキュウ。


「で、ここのXに代入して。はい、次を河崎(カワサキ)。・・・・・・河崎!か~わ~さ~き!」

「成嶋(ナルシマ)センセー。叶ちゃん(カナエ)、寝てま~す。ちなみに、ケイケイもで~す」

「・・・また、か」


隣の席の弥栄ちゃん(ヤエ)は、この眠気にも全く動じないスパルタな女性で。かすかに脳裏のはしに聞こえる言葉に、眉がピクリと反応した。ちなみに、ケイケイっていうのは、あたしの前の席で寝こけていると思われる松田 圭(マツダ ケイ)のこと。思われるっていうのは、あたしも寝ているから見えないのであって。


「起きろ、河崎!問題、答えられるとは期待してないから、起きるだけ起きろ」

「あ、ヒドイですよぉ~。センセー、叶ちゃんだって奇跡が起こるかも~。なんちゃってぇ」


弥栄ちゃん、ちょっとヒドイなぁ。まぁ、答えられるわけがないんだけどさ。う~ん。なんか寝てられない。起きるとしますか。


「河崎!起きろ!おい!」

「う・・・・あ、すみません」

「・・・・・・・・・・」


ん?なんなの、この沈黙は。ダル気に顔を上げれば、隣に立っているナルシーの顔は、なぜか固まっている。なんていうか、信じられないモノを見た時のような驚き。あれ?隣を見れば、おちょくっていた弥栄ちゃんも、同じような顔。


「・・・・・うそ・・叶ちゃんが」

「河崎が・・素直に謝った・・・・・しかも、ちゃんと起きてる」

「は?」

「なに?!なにがあったの?叶ちゃん!」

「そうだぞ、河崎!1人で思いつめるは良くない!なんでも言えよ!」

「はあ?」


2人からガシリと肩を掴まれ、なぜか慰められてしまった。・・・・・・意味が分からん。昨日の夕方から、あたしに対する周囲の反応は、こんな現象が続いている。なんでさ?まったく分かんない。圭を起こしにかかったナルシーを横目見る。

また、浅い眠りに落ちながら、昨日の夕方のことを思い出していた。




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策略ロマンス 第9話

「くしゅんっ・・・・・」


一成(イッセイ)の大きな自宅マンションに入った直後、なんとなしにくしゃみが出た。もう、なに?誰か、噂でもしてんじゃないの?にしても、広いな・・・・・。うちの家もデカイけど、ここはマンション。なのに、この広さを確保できるなんて、絶対に1フロア全部が高橋家なんだ。


「あれ?大丈夫、叶(カナエ)。さっき、雨降り出したから寒くなった?」

「ああ、いや、大丈夫。たいしたことないよ。でも、タイミング良かったよな。部屋に入ったら、ちょうど雨が降り出して」

「うん、そうだね。2人とも濡れなくて良かったよ。・・・・・・・ほんと、タイミングいい」

「え?なんか言ったか?」

「ううん、なんでもないよ。ココアでも飲む?」


さっきの一件で、本性がばれてしまったので、いまさら猫を被る必要もないわけで。今日一日見ていても、どうやら一成はいいヤツらしい。さすがは学校でも有名な優等生の高橋 一成だね。まったく、恐れ入るよ。どこまでいっても、ひたすら紳士。付き合ってもいない男の家に行くのはどうかと思ったけど、まぁコイツなら問題ないかな。そうそう、潤(ジュン)や孝司んち(タカシ)に行った時と同じように考えればいいんだ。


「そういやさ、潤に聞いたんだけど。一成って、潤と幼馴染なんだって?」


出された暖かいココアを口に運びながら、聞いてみた。向かいのソファに座っている一成は、一瞬驚いたような表情。でも、すぐににこやかな笑顔にもどる。


「そうだよ。潤とは、父親たちが大学の先輩と後輩っていう間柄で、昔からよく一緒に遊んだりしたよ。それ、潤から聞いたの?」

「そう。最初は驚いたよ、マジで。それに、あの潤の幼馴染だから、潤と同じようにバカっぽいのかと思えば、全然。一成って、潤の影響受けてないっぽいね」

「くすっ、潤の影響ねぇ。まぁ、受けてないわけじゃないけど。俺は俺の性格だし。・・・・・・・他には、何か聞いた?」

「う~ん。なんだったかな?他にも聞いた気がしたんだけど。う~ん?・・・・・・思い出せない。あっ、でもこれは聞いたよ。一成、今まで女の子のこと自分からデートに誘ったことないとか」

「まぁね。でも、本当に自分からデートしたいって思った子がいなかっただけだよ。自分から誘いたいと思ったのは、叶が初めて」

「う・・・うん・・・////


ほらきた。高橋一成の本日の名言!あぁ、ハズイ!!どうしても、こんなハズイことが次から次へと出てくるのか。石○純一みたく、愛の名言とかなんとかで、本出せるんじゃないの?


「俺も叶のこと聞いてたよ。誰とも付き合ったことないって」

「・・ああ、うん。・・まぁ、縁がないっていうか」

「どうして?好きになったことって、ないの?」

「う~ん。なんか、興味が持てないっていうか。いいなぁって、思う人がいないっていうか」


今更ながら、自分の苦い恋愛経験には笑うしかない。苦いっていっても、普通の子みたいに『好きだった子に振られた』とか、『突然の別れ』とかそんなんじゃなくて、もはや恋愛をしたこともないのだから、青汁より苦い。いや、青汁って飲んだことないんだけどさ・・・。

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策略ロマンス 第8話

のほほ~んとした、暖かい陽気の中、部屋に閉じこもっている。春の陽気がさらなる眠気を誘っている。

ここは、河崎邸。河崎 叶(カワサキ カナエ)の自室。

本人不在中。が、そこには高級ソファに寄りかかった2人と、地べたに座り机に顔を乗せている者が。計3名。順に、大山 潤(オオヤマ ジュン)、井上 真彩(イノウエ マヤ)、鈴木 孝司(スズキ タカシ)。3人は何をするでもなく、ぼぉっと春の陽気を楽しんでいた。言葉で表現するなら、それは、ポカポカ。


「それにしても・・・・・2人とも、仲直りしてくれて本当に良かったよ」


ふいに机に頭を乗せていた孝司が、頭をあげながら言った。その言葉には、心底安心したという雰囲気が出ている。数日前から、ケンカというか険悪なムードにあった潤と真彩だが、この2~3日の間に2人の間で和解が済んでいた。いつも必要以上にイチャイチャとしている有名カップルの2人だけあって、今回の出来事は孝司を本気で心配させることとなった。


「ん~?・・・うん、まぁな。今回のは、俺の力量不足ってやつ・・・・・・イテテテッ」

「大丈夫?潤、ごめんね。まだ、痛む?」


ソファに腰掛けた潤が、頬の大きな湿布を慌てて押さえた。その大きな湿布のせいで、せっかくの男前が隠れている。きっと湿布の下には、真新しい傷のあとがあるのだろう。そして、それは隣で心配そうにしている彼女の、真彩が付けたもの。


「あぁ、大丈夫。これくらいで、めげる俺じゃねぇよ。にしても、あいつらどうしてるだろうなぁ」


今日、この3人がなぜ本人不在の叶の部屋に押しかけているかと言うと、叶を心配する会という名の、くつろぎ会なのでした。なにせ、ほとんどの家族がバリバリの金稼ぎがうまく、金持ちの叶の家は4人の中で誰よりも広々としていて、大勢でくつろぐには最高の場所であった。そのうえ、本日は1人騒いでいる叶がいない。よって、広い部屋をゆっくりと満喫できる数少ないチャンスなのだった。


「叶と高橋くん(タカハシ)ね。どうかしら?だって、叶は猫被り止める気ないんでしょ?」

「そうらしいね。でも、僕はあの高橋くんと叶ちゃんって、良いカップルだと思うけどなぁ」

「そうかしら?高橋くんって、すっごく爽やかで人が良くて裏がないって評判なんでしょ?その彼が、叶みたいな裏のかたまりみたいな子とうまくいくわけないわよ。だいたい、どうして高橋くんみたいな誠実そうな人が、叶なんかを誘ったのか不思議だわ」


ガチャリ


急に叶の部屋のドアがノックもなしに開いた。今日は、河崎家の人間はみな外出していて、3人も叶からカギを借りて入ったのだ。それにはくつろいでいた3人も若干、驚いたが入ってきた人物を見て、肩をおろした。


「おい、叶?・・・・・って、なんだ、お前ら来てたのか」

「こんにちは、忍さん。お久しぶりです」


真彩が丁寧に挨拶した相手は、河崎 忍(カワサキ シノブ)。叶の4才年上の兄である。河崎家の遺伝に沿って、やはり美形な彼には、眼鏡がさらに美しさをアップさせている。態度のでかさは叶をも凌ぎ、かなり頭がよく、最近保険医の資格を取ったばかり。当然のごとく、モテル彼だが実は本人カミングアウト済みなホモでもある。

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策略ロマンス 第7話

かっっっなり、恥ずかしい・・・・・・ちょっと嬉しい・・・・・言葉を言われてから、一成(イッセイ)の顔がまともに見えれない。誰か、あたしに仮面をください!今までこんなことなかったのに!いつだって、冷静なオシトヤカな女の子を演じきれていたのに!


「叶(カナエ)?気分、悪いの?さっきから、ずっと下向いてるけど。どっか座る?」

「えっ?!い・・・・ううん!なんでもないよ!まだ、緊張してるのかも。あは・・あはははは!」

「クスクスッ、叶(カナエ)さ。本当に俺の前で演技しなくてイイから。疲れるだろ?」

「ア・・エ・・ほ・・・本当に演技じゃないんだよ?あっ!映画館、あそこじゃない?あたし、ココの映画館に来るの初めてなの!」


おかしいよ・・・。すぐに演技モードに入れない。一生懸命、誤魔化すのが精一杯だなんて・・・・。クスクスと笑っている一成の手を引っ張って、映画館に歩くあたしの顔は今までにないほど引きつってた。


「一成くん、どの映画見るんだっけ?」

「えっとねぇ、あっ!あの映画!」


あれって、どれ?ちょうど、今から見る映画なら、スパイのアクションものかドロドロ恋愛映画かなぁ?あぁ、たぶん一成は恋愛映画を見るつもりなんだろうなぁ。あたし、恋愛小説は書いてるけど、映像で他人がイチャコラしてるところは見たくないのよ。ムカツクからね。どっちかというと、あっちのスパイ映画のほうが・・・・・・・・・・・・実は、あたし必須のアクション好きでね!


「あぁ、あの今話題になってる恋愛映画?」

「クスクスッ、叶は恋愛映画、興味ないだろ?俺が見ようと思ってたのは、あっちのスパイ映画」


絶句だ。なんなの、コイツ?今まで告白してきた男なら、みんな絶対に恋愛映画を選んでただろうに。この男、どこまであたしを振り回せば気が済むわけ?!って、言いつつ嬉しかったりするので、怒鳴れない微妙な心境・・・・・。




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策略ロマンス 第6話

そして日付が変わって、いよいよやって来た日曜日。予定通り、駅前に来ているのは言うまでもなく・・・・はぁ。

昨夜、救心を飲んである程度、落ち着いたところでヨクヨク考えるとあいつは、あたしのことを気に入ったと言っていた。と言うことは、逆に嫌われるようにすればイインだと!そういう結論に至ったわけです。



しかしながら、心と身体は全く別のことを考えているようでありました。なぜなら例の服装ですが、ヤバイ!バッチリ、決めてしまった!!いかにも男の子が好きそうな、フリルの付いたワンピースに胸の谷間が少し見え隠れする服装。何やってるんだよ、あたし。今日は高橋 一成(タカハシ イッセイ)に嫌われるためにやってきたのに。これでは、まるっきり逆効果!!告白嬢の叶(カナエ)に(←たった今、命名)有るまじき行動だ!!


「ごめん!待った?」


百面相を繰り返していたあたしに、右方向から声を掛けた。もちろん、その人物こそ最も会いたくないヤツ、高橋 一成!!相変わらずの長身にオシャレな黒髪。さらに彼を引き立てているオシャレなメガネ。ジーパンにオシャレな上着。カシミヤか?とにかく着ている服とか時計とか見ると金持ちだと思う。まったく、見た目はジャニーズ顔負けの男前。


「いえ、今来たところです。高橋くん、私服も良く似合ってるね」


演技は続行。
いくら、こいつがあたしの演技を見破っていても、そう簡単に認めるわけないじゃん。だいたい、あたし30分も待ったんですけど。(←自分が早く来すぎただけ)それに、このあたしが見た目イイヤツ以外とデートなんかするわけない!(←ヤケクソ)



「ありがとう。叶ちゃんも服、似合ってる。すっごくカワイイよ。そうそう、今日は折角の2人っきりでデートなんだし、猫かぶりしなくてイイよ。ね?」
「なっ・・・・。(ダメダメ、つい素が出そうになった・・・)その・・・高橋くん?この前も言ったけど、あたし猫かぶりだなんてしてないよ。これが素・・・」
「ウソ!クスクスッ。キミが本当にその性格だったら、俺はデートに誘ったりしないよ。演技してない、そのままのキミが気に入ってるんだ。ああ、もちろん猫かぶりしてる健気なところカワイイけど」



ちょ・・・ちょっと喜んでんじゃねぇ~よ、自分!!こいつは、あたしのこと『猫かぶり』とか言うようなヤツなんだぞ!!きっと高橋のあのスマイルに騙されてるんだ!!そうに違いない!!


「映画まで、まだ時間あるから買い物しようと思ってるんだけどイイ?」

「あ・・うん。高橋くんが行きたいところで」

「そっ、ならそう言うことで。あと、俺のことは『一成』って呼んでくれてイイから。俺も『叶』って呼んでイイ?」

「じゃあ、一成くんで。あたしのことは好きなように呼んでくれてイイよ」

「それじゃあ行こっか、叶」


そう言ってヤツは、あたしの手を取って歩き出す。うわぁ、うわぁぁ!名前で呼ぶとか、手を握るとか『恋人』みたい!!こ・・・・こいびと?コイビト?恋人?えぇ~~??!!なに考えてるのよ!!こんなヤツと恋人とか有り得ない!!

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策略ロマンス 第5話

「た・・高橋 一成(タカハシ イッセイ)とやらは何者じゃい!」

「その前に、あんたこそ何様のつもり?」


天に向かって叫ぶあたしに、目の前の真彩(マヤ)は静かに言い放つ。

ここは真彩のクラス、3年C組。なんと、あたし達のクラスは3年間まったく同じなのだ。去年もオカシイとは思っていたが、あまり気にしなかった。しかし、さすがに今年は、オカシさに気付いたわ。でも、やっぱり慣れ親しんだ仲間とは何か離れがたいものがあるので、敢えて今もそのままだ。


「だって!!あのヤロー、マジでムカツクんだもん!!なんなの、あの態度!!何が、『猫かぶりが上手だね』だよ?!猫かぶりだと?!そのままで充分カワイイけど、敢えてそこに花を添えてあげてるだけでしょーが!!どうして、あんなヤツごときに笑われなくちゃいけないのよ!!」

「あんたさぁ、『墓穴掘る』って言葉・・・・知ってる?」

「酷い!酷い!真彩まで、そんなこと言う!!」

「だぁって、本当のことでしょ?ねぇ、孝司(タカシ)?」

「え?僕?こ・・今回のことは、真彩ちゃんに一理あるかも・・・・」


D組から遊びに来ていた孝司が、苦笑いしながら控えめに答える。本当に彼は成長の過程が目に見えるというか、なんと言うか。この前の10月の時よりも、また1段と明るく凛々しくなった様な気がする。


「孝司?また、何かあったでしょ?」

「え?・・・・・そ・・そうかなぁ?」


あっ!こいつ、知らない振りするのも覚えやがったな!!ヨッケイなことまで、覚えやがって!!


「そんなことよりも、高橋君って言えば成績がいつも学年トップで有名だよね?」

「あっ!何よ、孝司!話の逸らし方まで覚えたの?まったく、誰よ!そんなの吹き込んだの!」

「うるさいわね、叶(カナエ)!いいじゃない、孝司が成長してるんだから!!」


静かに眺めていた真彩が行き成り立ち上がって、怒鳴った。これには、あたしも孝司もビックリで固まってしまった。


「は・・はい。そう、ですね」

「そうよ。叶も少しは成長しなさいよね!」

「あ・・あの。なんだか真彩さん、機嫌悪くないですか?」

「別に」

「もしかしてですが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・潤(ジュン)と何かあった?」

「べっつに!!」

「「((何かあったんだ・・・))」」


真彩の珍しい生々しいオーラに、孝司と2人で身を寄せ合っているとタイミングが良いことに、あの男が登場。あの男とは・・・・・・・そう真彩の彼氏、潤だ。

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策略ロマンス 第4話

あっと言う間に時は駆け抜け、あたし達は高校3年生になった。入学式も終わり、初初しい1年生たちのあどけない制服姿を横目見る。

そして只今あたしは3年生、初の告白を受けております。相手は、2年生の名前は、えぇ~っと何とかクン?(←酷!)見た目はショタ系で、孝司よりも幼い感じ。


「え・・えっと。あの、河崎(カワサキ)先輩!」

「なぁに?」

「その・・・・ず・・ずっと先輩が好きでした!つ・・付き合ってください!!」


はいはいっ、またそのパターンかよ。いい加減、飽きてきたなぁ。しかし、これも好感度のため、好感度のため・・・・。


「ほ・・・本当?」

「はい!ずっと好きでした。先輩しか好きになれません!」


おっと、そのセリフこないだ、小説で使ったよぉ。矢野ちゃんは、絶対にクサイから止めとけって言ったけど。ほらみろ、やっぱり使う子いるじゃん。


「・・・う・・うん。でもね、ごめんなさい!」

「ど・・どうしてもダメですか?!僕、今はこんなだけど頑張ってカッコイイ頼れる男になります!」


いやいや、キミは今のキャラでいった方がイイと思うんだけどな。変に鍛えたりなんかしたら、潤みたいに筋肉バカのアホになるかもしれないし・・・・。


「それは嬉しいんだけど。キミは、そのままでも充分魅力的だと思うよ。でも・・・・ごめんなさい。あたし・・・・あなたとは付き合えないの。ごめんなさい!」

「・・・う・・ぐずんっ。分かりました!話し聞いてくれただけでも良かったです!ありがとうございます!!」

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策略ロマンス 第3話

カタカタカタ


「う~ん」


カタカタカタ、カチカチ


「おっ!最新映画情報、出てんじゃん!!」

「・・・・・・仕事中に、な~に~してんですか~?」

「うわぁぁ!!ビックリさせないでよ、矢野(ヤノ)ちゃん」


疲れて帰ってきた放課後。ここはあたしの自宅の仕事場。真彩たちが集まっている自室とは別に、あたし専用の仕事場がある。そして、今あたしの机には最新型のパソコンが1台。その横で恐ろしい顔で立っているのが編集担当の矢野 幸一(ヤノ コウイチ)、24歳である。


「ビックリじゃないですよ?!前半の画面は原稿書いてたのに、どうして後半は映画情報になってるんですか?」

「だって~、なかなか進まないんだもん。ちょっとくらい息抜きしなきゃやってらんないって」

「先生の場合は息抜き過ぎです」


矢野ちゃんはもちろん、あたしより年上だけど、こっちの立場は『小説家の先生』だから、彼はいつも敬語。どうやら、あたしの周りにはイケメンが集まるらしく、矢野ちゃんもまた男前だ。陰気臭いところもないし、むしろ編集というよりも、どっかのホストって感じ。


「ああ、そう言えば矢野ちゃんの彼女とは、うまくいってんの?」

「ニヤニヤして聞かないで下さい。気持ち悪いですよ」

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策略ロマンス 第2話

『明日からはマジ本気で彼氏探し運動に全力を尽くす!』

なぁんて、言っちゃったものの・・・・・。はぁ・・・。そんな簡単にはいかないよぉ。何ひとつ変わりなく昨日の宣言をした後、もう次の朝がやってきているわけで・・・。


「やだぁ、もう!潤(ジュン)ったらっ!みんなが見てるじゃないvv」

「いいじゃん。見たいヤツには見せてやればvvいやぁ、それにしても昨日の夜の真彩(マヤ)はカワイかったなぁvv」

「きゃぁぁあ!そんなこと言わないでよぉ~vv恥ずかしいぃ~vv」


こ~い~つ~ら~は~!!よくもまぁ、朝っぱらからイチャイチャベタベタと!!潤と真彩は、あたしんちで喋った後、潤のお家にお泊りですか?!ったく、近頃の高校生ってのは、ハシタナイ!(←誰だよ!)

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策略ロマンス 第1話

秋風吹き抜ける10月のある日。木木たちは紅葉を始め、人々は慌しく家へと足を進める。そんな中、あたしは1人、学校付近の公園へ向かっていた。

理由?

あたしが公園に向かっている理由。その公園に、ある1人の人物が待っているから。それだけのために、あたしは公園に向かう。もう、だいぶ待たせていると思うと自然に歩調が速くなる。何故、その人物があたしを待っていてくれるかは、少しばかり回想を含めてお話しよう。




同日、午前8:30。

私立美船(ミフネ)高等学校、2年生下駄箱。あたしは、いつもの様に自分の下駄箱を開け、上履きを取り出した。すると上履きを一緒に、ある封筒がヒラヒラと落ちてきた。

何だろう?

不思議に思いながらも、封筒を手に取る。黄色い封筒の表には


『2年B組 河崎 叶(カワサキ カナエ)様』

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新連載小説!!

こにゃにゃちわ~~~~!!秋月 キョウです。今日のあいさつは、カードキャプターさくらのケロちゃん風にしてみましたvv 今回のご報告は、新規小説を連載しよう!ということです。

迷った末、恋愛小説に決めました!まぁ、恋愛になっていれば・・・・の話ですが。題して、『策略ロマンス』!!ネーミングセンスないです・・・・・ごめんなさい【泣】


気を取り直して、どんな物語かと言いますと、まずギャグです!!ソウルイーターよりもギャグ度が増しております。高校生の同級生2人のお話です。女の子の方は、カナリ男勝りで校内、1~2を争そうような美人。告白も数多けれど、1度も付き合ったことがなく、ファーストキスもまだ。そんな彼女と校内成績ナンバー1、ついでにイケメンな男の子。この2人が付き合うまでのお話。


私的に気に入っているお話の1つです。どうか、皆さんにも楽しんでいただけるよう精一杯書かせていただきました。(まだまだ、ですけどね)お気軽に読んでみてください。

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