« 新連載小説!! | トップページ | 吹奏楽コンクール☆ »

2006年8月 7日 (月)

策略ロマンス 第1話

秋風吹き抜ける10月のある日。木木たちは紅葉を始め、人々は慌しく家へと足を進める。そんな中、あたしは1人、学校付近の公園へ向かっていた。

理由?

あたしが公園に向かっている理由。その公園に、ある1人の人物が待っているから。それだけのために、あたしは公園に向かう。もう、だいぶ待たせていると思うと自然に歩調が速くなる。何故、その人物があたしを待っていてくれるかは、少しばかり回想を含めてお話しよう。




同日、午前8:30。

私立美船(ミフネ)高等学校、2年生下駄箱。あたしは、いつもの様に自分の下駄箱を開け、上履きを取り出した。すると上履きを一緒に、ある封筒がヒラヒラと落ちてきた。

何だろう?

不思議に思いながらも、封筒を手に取る。黄色い封筒の表には


『2年B組 河崎 叶(カワサキ カナエ)様』

と、書かれていた。河崎 叶とは、あたしのこと。下駄箱を間違えたのかと思っていたが、この手紙は間違いなく、あたし宛。そのことが分かると、どうも落ち着かない。こんな手紙は貰いなれていないからだ。心臓の鼓動を感じながら、封筒を裏返す。


『2年E組 塚本 大介(ツカモト ダイスケ)』


右下に小さな字で書いてあった。

塚本 大介・・・・。

聞いたことがある名前だ。確か、水泳部のエースだったはず。男の子からの手紙にドキドキするのを止められない。恐る恐る、手紙の封を解く。中からは封筒と同じく、黄色の紙が出てきた。そこに並べられていた字は、お世辞にも綺麗とは言いがたい。しかし、一生懸命な心が伝わってくる物だ。その内容は、こうだった。


『河崎 叶様

はじめましてと言うべきかな?おれは2年E組の塚本 大介っていいます。突然のこんな手紙でゴメンネ。ちゃんと直接、渡したかったんだけど、なかなか会う機会がなくって。こんな手紙を渡した時点で、もうばれちゃってると思うけど、おれ、河崎に会って伝えたいことがあるんだ。今日の放課後、学校近くのどんぐり公園で待ってます。   塚本 大介より』


これは所謂、告白の呼び出しの手紙っ!あたしは必要以上に舞い上がってしまった。なんてったって、告白っ!しかも、相手は水泳部のエースっ!

喜ばないわけがない。それからの1日は、そのことが頭から離れず、授業の内容も脳内を素通りしてしまう。

なんて言えばイイのだろう?うまく喋れなかったら、どうしよう。放課後が近づくにつれて、心臓がバクバクする。いろんなことで迷っている間に本日、最後の授業が終了。放課後になってしまった。早く公園に向かおう。

こうして、文頭に戻るのだ。









急ぎ足で歩いていると、どんぐり公園が見えてきた。

いよいよだ。

人通りが少ない公園内に入ると、目的の人物が目に飛び込んできた。水泳部のエース、塚本 大介くん。彼もそわそわしながら、辺りを見渡していた。さっきよりも心臓の音がうるさい。なんとか息を正常に戻し、彼のもとへ。


「あ・・・・・あの」


緊張して声が上擦る。変に思われていないだろうか?余計なことばかり考えてしまう。そんな、あたしの声に彼が驚きながら振り向いた。


「あっ!河崎さん!き・・・・来てくれたんだ」

「う・・うん。あの、て・・・・手紙で」

「読んでくれたんだ?」

「うん。それで、伝えたいことって・・?」


少し上目遣いで見上げる。塚本くんは、顔を真っ赤にしながら照れくさそうだ。


「あ、うん。そのさ・・・・・・え、と。じっ・・・実は、おれ!河崎さんのこと、ずっとずっと好きでした!!付き合ってください!!」


そう言って、右手をあたしの前に出した。OKだったら、手を握って欲しい。そういうことだ。


「で・・・でも。その~」

「わかってるんだ。河崎さんモテルから、おれなんか全然つり合わないって。それでも、それでも河崎さんのこと諦められなくって!だから、お願いします!」


ここまで、言ってくれるなんて!スゴク嬉しかった。でも・・・・・。


「あ・・あのね。塚本くんの気持ち、すっごく嬉しい。でも、これだけは聞いておきたいの。あの・・・・あたしのどこが好き?」

「えっ、えと・・・・」


このことだけは、聞いておきたかった。この質問の答え次第で、返事を決めるつもりだった。しかし・・・・彼の言葉は、そこで途切れてしまった。

















「そこであたしは、わかったのよ!あの男の狙いを!!」

「ああ、はいはい。で、なんだったの?その狙いとやらは?」


部屋には、空になったペットボトルとスナック菓子が散乱している。読みかけの雑誌、テレビゲームから軽快な音楽が流れている。


「その黙り込んだ男の目線は、あろうことか、あたしの胸元へ!そう、あいつの狙いもやっぱり、あたしの体だったのよ!!最低よ!超最低よ!!そりゃあさぁ、あたしってナイスボディのDカップちゃんだけどさ!だからって、ありえない!!まだ、顔がカワイイとかの方がマシよ!!」

「はいはい。そりゃあ、かわいそうに」

「毎度のごとく、お気の毒よね~」

「2人とも!そんなこと言っちゃダメだよ!叶ちゃんだって、悲しんでるんだから!!」


この1室には、4人の男女が居座っていた。そして、この広~い20畳はある部屋の主は、河崎 叶。


「そうよぉ、あたしは傷付いてるのよ!毎回、毎回。告られる度に、同じ質問をしてきたわ!なのにどうよ?毎度、毎度。答えは同じ!口に出さなくっても、わかるわ!み~んな、体目当て!性格とか、心とか、全部とか!他にもっとマシなことが言えないのか?!」

「ねぇ、叶~。そろそろ、今日の『武勇伝の演説』終わってくれない?」

「そうそう。しかも、その武勇伝も後半は合ってるけど、前半は納得できん」

「そうよぉ。後半は真実だけど、演技だったんでしょ?」


そうなのです!

先程、前半の並べられた文章・・・。あれは、叶の武勇伝でありました。確かに真実ではありますが、文章どおりの『ドキドキ❤トキメキ』的なものではなく・・・。


「はぁ、キミたち分かってない。良き憧れの恋愛を求めるには、少しばかりの演技も大切なのよ」

「ほぉ~、お前の言う『少しばかり』ってのは・・・」


プレステの格闘ゲームを中断し、叶が座っている勉強机の方に体を捻った男子。彼は、大山 潤(オオヤマ ジュン)。名前と同じく大きな図体で、そのせいか1度も年齢を性格に当てられた事がない。


「学校と私たちとで性格、使い分けなきゃなんないほどのことなのかしら?」


潤のあとに続いて、めんどくさそうに話し出したのは井上 真彩(イノウエ マヤ)。彼女もまた、叶に負けず劣らずのナイスボディで美人だ。真彩は、部屋にある大きめのソファに腰掛け、ツメのお手入れをしている。


「まったく、あんたらはホントにあたしの親友かい?!ああ、あたしの見方は孝司(たかし)だけだよ~~」

「うわぁぁあ!ちょっ・・・ちょっと叶ちゃん!!」


叶がイスから飛び降り、床に置いてあるガラステーブルの前に座っていた、背の小さい男子に抱きついた。彼の名前は、鈴木 孝司(スズキ タカシ)。孝司は、一般の人々よりも少し引っ込み思案なのだ。これでも彼らとツルむ様になって、だいぶ改善された。それでも、やはり彼ら以外の人間は苦手の域に入る。


「はぁ・・・・あのねぇ、叶?あんたの理想もわかるけど、毎日のように告白されてるのに、全部断っちゃうなんて、申し訳ないとは思わないの?」

「真彩の言うとおり!ってか、あんだけ告られてたら1人ぐらいイイなぁって思うヤツいるだろ、普通」


自分より小さな孝司の頭にスリスリしていた叶が、頭を上げる。孝司は、叶のジョーク的な行動にも恥ずかしさが出てきて、顔を真っ赤にしている。


「普通じゃなくて悪かったわね!大体、あんたたちは良いわよ!美男美女のカップルで、ヤル事なんてとーっくの昔にヤッちゃってるしさ!」

「そりゃあ、真彩が素直でカワイイから、抑えが効かなくなっちまうんだよ」

「もう!潤のエッチ!みんなの前で言わないでよ」

「ああ、はいはい。一生やってろ!万年バカップル!」


叶と同じくらい容姿抜群の潤と真彩が何故、叶と同じように告白の嵐にあったりしないのか?

答えは簡単。

その2人(潤と真彩)が付き合っているからだ。美男美女の2人は、お似合い過ぎて、わざわざ邪魔しようとするものはいない。暇あれば、イチャイチャしている彼らは、もはや校内公認バカップルである。


「というよりさぁ、叶。あんた理想が高すぎんのよ。ワンランク下げるくらいしないと、彼氏なんて一生出来ないわよ?」

「うぅ。それは、わかってるけど~。なんて言うか、しょ・・・職業柄?」

「「はぁ・・・・」」


潤と真彩が揃って溜め息をつく。


「ちょ・・ちょっと!2人揃ってその反応はヒドイじゃん!」

「ヒドくもなるわよ。職業のせいにするなんて、ヤノッチに失礼!」

「叶の場合、職業柄じゃなくて、ただの自業自得だろ~が」

「どうして、そこで矢野(やの)ちゃんが出てくる?!そして、自業自得ってなんだよ?!やっぱり、わかってくれるのは孝司だけ。ねぇ、孝司?」


相変わらず抱きつかれたままの孝司に、みんなの視線が集中する。


「ええ?!そ・・・・そんな僕は、わかんないよぉ~」

「イイのよ、孝司。はっきり本当の気持ち言っちゃって」

「そうだ。こう言うことは、すっぱり言って分からせてやらなきゃな!」

「う・・・うん。じゃあ、あのね。叶ちゃん、もうちょっと断るかどうか考えてあげたらイイと思う。あっ、で・・・でも!叶ちゃん、本当にカワイイし優しいから、きっと理想の人もいつか現れると思うよ!」


彼は、なんとか言えた自分の意見に、やはり恥ずかしさが出てきたようだ。両手で真っ赤になった顔を隠している。潤と真彩は、孝司の言葉に前半頷き、後半首を傾けていた。


「はぁ、そっかぁ。孝司にまで言われるとは。あんたに言われると説得力あるわ~」

「あ、えっと。ご・・・ごめんね。お・・・落ち込ませるつもりは無かったんだけど!」

「ああ、イイのよ孝司。叶には、ちょっとくらい落ち込ませる方が調度イイの」

「え?!そ・・そうなの?」

「「そうそう」」


2人は同時に頷き、信じやすい孝司は彼らのことを真に受けそうになっていた。とうの叶はというと、ベランダの近くの窓にもたれ、ひと昔前の刑事ドラマよろしく、感傷に浸っていた。


「でもねぇ~、みんな。あたしは決めた!明日からはマジ本気で彼氏探し運動に全力を尽くすと!!」


そうして、潤と真彩が呆れ、孝司が心配する中、叶は今更ながらの決心をしたのでありました。

|

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2952069

この記事へのトラックバック一覧です: 策略ロマンス 第1話:

コメント

コメントを書く